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関節リウマチ

関節リウマチとは

「関節」とは簡単に言うと、体のなかで曲がる部分のことを指します。具体的には手指、手首、肘、肩、膝、足首、足趾などです。関節は関節包と呼ばれる柔らかい袋に包まれており、その中に骨と軟骨が存在します。軟骨は骨と骨の間でクッションの役割を果たしています(図1)。

(図1)関節は、関節包(茶色)、骨(青色)、軟骨(緑色)から構成されます。軟骨は骨の表面でクッションの役割を果たしています。

関節リウマチは体の免疫異常により、滑膜と呼ばれる柔らかい組織が関節内に増えてきて、骨や軟骨を壊していく病気です(図2)。

(図2)関節リウマチでは骨の周りに増殖した柔らかい組織(滑膜:赤矢印)により骨と軟骨が破壊されます。

過去にはフランスの画家ルノワールがリウマチを患っていたことは有名で、彼の写真をインターネットでみるとリウマチで手指が変形していることがわかります。日本では全国におよそ70~100万人のリウマチ患者がいると推定されており、めずらしい病気ではありません。リウマチの関節破壊が進むと、手や足は見た目にもかなり変形してきます(図3)。

(図3)進行したリウマチ患者の手指変形

リウマチでは手足だけでなく、手首、肘、肩、膝など他の関節に腫れや痛みを生じることもしばしば見られます。お年寄りが老化の影響で膝が痛くなる変形性膝関節症では、内側の軟骨を痛めて両下肢が内側に曲がり英単語のOの字にみえる変形(O脚)をきたしますが、リウマチでは逆に膝から下が外側に曲がってエックス脚(X脚)の変形を来すことがしばしばあります。リウマチの初期の痛みや腫れが進行すると、次にフタをはずす、ふきんをしぼる、服を着る、風呂で体を洗う、トイレで用をたす、などの日常生活動作が不便になってきます。さらにリウマチが進行すると、自分の身の回りの動作ができなくなり、寝たきりになることもあります。このように何も治療しなければ、リウマチは徐々に状態が悪化して関節の痛みや変形が進行し、自力での日常生活が困難になっていくことが一番大きな問題です。

リウマチの原因

リウマチの原因は完全には解明されていませんが、さまざまな研究により原因が徐々にわかってきています。TNF、IL-6、T細胞などは、リウマチで悪さをしている代表因子です。これらの因子が体の中での情報伝達を経て、破骨細胞と呼ばれる骨を溶かす細胞を活性化して関節を破壊していきます。これらの因子をおさえるお薬が現在のリウマチ治療の主流となっています。

リウマチの症状

打ってもいないのに関節に痛みや腫れが出てきた、朝方を中心に手を握りにくくなった(こわばる)、などが初期のリウマチによく見られる症状です(図4)。

(図4)リウマチでは誘引なく手指が痛くなりこわばって手を握りにくくなります。

手指の先端ではなく、真ん中や根元の関節、手首がリウマチの痛みの好発部位です(図5)。両側に生じることもよくあります。肘、肩、膝、足首、足の関節にもリウマチの腫れや痛みがおこることがあります。

(図5)リウマチで痛みがでやすい手の関節(青印)。
リウマチでは指先の関節が痛くなることはまれです。

リウマチの診察

リウマチの関節痛がどの程度なのかをまず聞きます。ちょっと痛むのか、かなり傷むのか、激痛なのか、などです。自分で考えうる最大の痛みを100、全く無痛を0として痛みの程度を表現してもらうこともあります。次に、手などの痛む関節を触って腫れ具合と押さえて痛むかを確認します。水道の蛇口を回したり、タオルをしぼるなどの日常生活動作でどのくらい不便しているのかを確認します。リウマチによる関節痛や腫れで生活に支障を来せば来すほど、リウマチの状態は悪く、将来的にも悪化しやすいことがわかっています。

リウマチの検査

採血、レントゲン、エコーがリウマチ検査の3本柱です。採血では、CRP、リウマチ因子、抗シトルリン化ペプチド抗体を主に調べます。CRPは炎症反応とも呼ばれ、リウマチの活動性(いまどれくらいリウマチが暴れているか)の指標です。リウマチ因子や抗シトルリン化ペプチド抗体はリウマチの素因をみるものですが、これらが陽性の方は先々リウマチが悪化しやすいことがわかっています。薬物治療の副作用の観点から、肝臓や腎臓の数値に異常がないかを確認します。
関節リウマチでは発症後1~2年の思ったより早い時期に骨の破壊が進むことが最近分かってきました。骨の破壊を調べるレントゲン検査では、リウマチで痛みがある関節の骨や軟骨が壊れていないかを見ます。リウマチにより骨と骨のすきまにある軟骨が溶けてくると、骨どうしがくっついて見えてきたり(図6)、骨の表面が虫食い状に凹んで見えてきます(図7)。リウマチ自体により肺に異常な影が現われることがあり、胸のレントゲンも確認します。

リウマチの痛みがある左手首(上の図)では、無症状の右手首(下の図)と比べて、骨と骨の隙間にある軟骨が溶けて骨どおしがくっついて見えます。」

(図7)リウマチにより手首の骨が溶けて虫食い状に見えています(赤矢印)

エコーでは、関節内に滑膜と呼ばれるリウマチで骨や軟骨を壊していく組織が増えていないかを確認します。外見上、はれが目立たない関節でも、エコーでみると滑膜が増えていることがあります。レントゲンは骨が壊れた結果を見ていますが、エコーでは骨を壊している張本人(リウマチの一番の悪者)、つまり滑膜自体を映し出すことができます。組織血流の勢いを評価するドップラー信号(エコー上で赤や青色に映る)が滑膜で見られるときは、リウマチが骨を壊す勢いが強いと考えられ、リウマチ活動性の1つの指標になります。つまり、レントゲンで骨が壊れていない人でも、エコーでドップラー信号がでている滑膜が確認されたら、将来的にその関節の骨は壊されていく可能性が高く注意が必要です(図8,9)。

(図8)37歳女性の左薬指の付け根の関節
関節のまわりに黒くうつる滑膜が増殖し(青矢印)、内部にはドップラー信号(赤い色)が見られていてリウマチ滑膜の活動性が高いことがわかります。骨の表面はでこぼこで骨が壊れていることを示します(黄矢印)。

(図9)85歳女性の右肘
関節のまわりにはドップラー信号(赤と青色)が見られており活動性の高いリウマチ滑膜が確認できます。骨の表面はでこぼこで壊れ始めていることを示します(黄矢印)。

リウマチの診断

1987年に発表されたアメリカリウマチ学会の診断基準に基づいてリウマチの診断を行います。2010年に発表されたリウマチ分類基準も参考にします。これらの基準は、腫れたり痛みがある関節の部位と数、採血結果から総合してリウマチを診断するものです(図10)。採血でリウマチ因子が陽性だけで即リウマチとは診断されません。

(図10)リウマチの診断要素

リウマチの治療

リウマチは治療をしなければ徐々に進行します。言いかえれば、治療せずに自然に治ることはほとんどないことがわかっています。リウマチと診断されたら早めに治療を開始することが大切です。治療に使うお薬には、飲み薬として抗リウマチ薬、鎮痛剤、ステロイドがあり、注射としては生物学的製剤とステロイドがあります。
飲み薬では抗リウマチ薬を第1選択に考えます。中でもメトトレキサートは関節の痛みや腫れを治す効果が優れている薬剤で中心的な役割を果たします。抗リウマチ薬だけでは痛みが残る場合には、鎮痛剤やステロイドを最小限の量で使います。これらの飲み薬がもし効かないときは生物学的製剤を考えます。現在日本ではリウマチに対して6種類の生物学的製剤が使えます。これらはリウマチの原因因子であるTNFやIL-6、T細胞を抑えることで効果を発揮します。飲み薬が効かなくても多くの場合は生物学的製剤で痛みや腫れを抑えることができます。抗リウマチ薬では内服により痛みや腫れが治まっても、骨は少しずつ壊れていくことがありますが、生物学的製剤は骨の変形進行を予防する効果が飲み薬より優れています。この薬の登場によりこれまで治療できなかった多くのリウマチ患者さんを治すことが可能となり、「リウマチは治る時代」と言われるようになりました。
手首、肘、膝など1~2か所のみにリウマチの痛みが限局するようであれば、ステロイドの局所注射は速効性があり、また全身的な副作用もほとんどなくお勧めできます。抗リウマチ薬投与初期など効果発現に2~4週程度必要なことが多く、補助的な鎮痛処置として有効だと思います。注射というと怖い感じがしますが、当院では極細の針を使っていますので、注射自体は「痛い」というより、「チクッとする」ような感じです(図11)。
抗リウマチ薬や生物学的製剤には副作用があります。軽いものは皮膚の湿疹・かゆみ、胃腸障害(嘔気、下痢、腹痛)、肝臓酵素上昇などで、重いものでは肺炎が含まれます。いずれも頻度が高いわけではありませんが十分に注意が必要です。投与前にあらかじめ採血で肝臓や腎臓の値、胸のレントゲンに異常がないかを確認するとともに、経過中も定期的に(当院では基本的に月1回)採血と検尿を行い、副作用の確認をすることが大切です。リウマチ患者さんには体調に十分気を付けてもらい、人ごみに出るときにはマスクを着用したり、うがい・手洗いの励行をお願いしています。体調が悪いときは無理をせず、こまめに発熱の有無を確認してもらいます。特に咳は肺炎などの初期症状のことがあるので注意が必要です。普通のかぜでも咳がでることはあるので区別がときに難しいのですが、発熱や息苦しさを伴うときは注意が必要です。「リウマチの薬は副作用がこわい」とよく聞きますが、定期的に検査を行い体調に気を付けてもらえば、そこまで恐れる必要はないと考えています。

(図11)当院では極細の針を使っています

リウマチの漢方治療

リウマチ患者さんを診ていると関節の痛みだけではなく、不眠、頭痛、冷え、めまい、肩こり、のぼせ、ほてり、発汗異常、動悸、だるさ、うつ症状、胃腸障害などの多様な症状でお悩みの方がおられます。リウマチ治療の基本は西洋薬(抗リウマチ薬や生物学的製剤)ですが、こういった付随する症状に対しては古来からの漢方薬が効く方がおられます。たとえばメトトレキサートで痛みがよくなって日常生活が大いに楽になったが、全身倦怠感や疲れやすさが残っている、という場合があります。顔色不良もあれば漢方的には気血両虚と呼ばれる体の生命エネルギーが衰退した状態と判断され、大防風湯(だいぼうふうとう)などの気力を補う漢方薬を使います。冬の寒さやクーラーの効いた部屋などで寒冷刺激により関節痛が悪くなる人には、桂枝加朮附湯などの冷えを改善する漢方が有効です。手のこわばりや足のむくみは漢方的には「水分のかたより」による異常という考え方に基づいて、余分な水分を改善させる防己黄耆湯(ぼういおうぎとう)などの黄耆を含む漢方薬を使います。手足のうっ血や血行障害では、当帰芍薬散や桂枝茯苓丸などの駆瘀血剤(くおけつざい)を使って治療します。さらにリウマチを数十年と長期間にわずらい気力や体力が失われてしまうケースでは、補中益気湯や十全大補湯などの免疫力を高めて気力を補う漢方薬がお勧めです。そのほかに、頭痛やめまいに対して五苓散や半夏白朮天麻湯、不眠に対して酸棗仁湯、抑肝散、うつ症状に対して加味帰脾湯などをよく使います。リウマチだからといって西洋薬に固執することなく、体調を改善するのであれば西洋薬、東洋薬を問わず利用する価値があるのではないでしょうか(図12)。漢方薬については、別欄に書いていますのでご覧になってください。

(図12)当院ではリウマチに対する漢方治療も行っています